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2007年12月14日 (金)

「春夜」(春宵一刻直千金) 蘇軾

 

 

 

 

 

 「タイム イズ ゴォールド」

                 AKY訳

タイム イズ ゴォールド(黄金)春の宵

月は朧に花清(さや)(か)

夜ごとの宴(うたげ)もしずまって

鞦韆(ぶらんこ)夜風に身をゆだね

(原詩)       

 「春夜」

       蘇軾

春宵一刻直千金

花有清香月有陰

歌管樓台聲細細

鞦韆院落夜沈沈

  

(読下し文)

 「春夜(はるのよ)

             蘇軾

春宵一刻直千金

花に清香有り月に陰有り

歌管樓台(ろうたい)聲細細

鞦韆(しゅうせん)院落(いんらく)夜沈沈



 蘇軾(一〇三四~一一〇一)、字は子瞻(しせん)、号は東坡(とうば)居士、四川省眉山県の人。宋代第一の詩人として知られています。
 この詩は、第一句があまりにも有名。時間を金に換算するところは、現代的といえるでしょうか。
 ところで、「一刻値千金」てどのくらい価値のものでしょうか。一刻は、時間の単位で、日本では、十二分の一日(二時間)とされていますが、中国では百分の一日だそうです。すると、十四分二四秒。これが千金すなわち千両に値するというのです。
 宋の時代に一両がどのくらいの重さだったかは、よくわからないのですが、日本の尺貫法では、三七・五グラムと定められているそうです。ただし、これは、時代によって変動していたようで、江戸時代には、四〇~50グラムぐらいであったらしい。仮に一両四〇グラムとして千両だと四〇キログラム、現在(平成一九年十二月)の金相場は、グラム三千円ぐらいなので、十五分弱で一億円を超えることになります。日本の一刻だったら、八億円。まさに「時はかね(黄金)なり」。そんなことから、タイムイスゴォールドとしてみました


 第二句の「花に清香あり、月に陰あり」、これが、その一億円の内容。花は李か杏か、日本では、梅の花か、夜風に花の香が漂ってきます。月も煌々と輝く満月では深みがない、ここは、朧にかすんでいなければ。一寸前までにぎやかだった宴も、いまは、遠くで切れ切れに聞こえるだけになりました。「歌管樓台聲細細」のところは、「聲寂寂」としているテキストもあり、その場合は、宴の歌や笛の音も、もはや止んでしまったということになります。細細の方が余韻が感じられるように思います。
 第二句以外は、名詞と形容詞のみで、あざやかに春の夜を表現しています。

  • 「歌管」は、歌と楽器。
  • 「楼台」は、高殿。
  • 「院落」は、中庭。
  • 「夜沈沈」は、夜が深深と更けるさま。
  • 「鞦韆」は、ぶらんこ、江戸時代には「ふらここ」とも言った。中国では、女性の遊戯具として彩りも華やかな優雅なものであったらしい。

 中庭では乗るものもいないブランコが風に静かに揺れて、夜は、しんしんと更けていきます。


[(参考)他の方々の訳詩]

「鞦韆(ぶらんこ)ヒッソリ夜ノ庭」

              松下緑訳

コガネニ喩(たと)ウ春ノ宵

花ノ香匂ウオボロ月

宴ノ笛ノ音モトオク

鞦韆(ぶらんこ)ヒッソリ夜ノ庭

  

            土岐善麿訳

ひととき惜しき春の宵や

月に陰あり香るは花

たかどのかすかにもる歌笛

ふらここたれて夜はふけたり

(2008/05/27改訂)
「春夜」の印刷用ファイル(b002_print.pdf」)ダウンロード


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