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2008年3月15日 (土)

A-056 「考槃」(槃しみを考して澗に在り)  『詩経』 国風 衛

 

  「いいことしたの」
            
AKY訳

谷のほとりで いいことしたの

あの人ったら やさしくって・・・

独り寝の 夢覚めて呟く あのときのこと

いつもいつも「想っているわ」
 

山のふもとで いいことしたの

あの人ったら くつろいじゃって・・・

独り寝の 夢覚めて歌う あのときのこと

いつまでも「忘れないわ」
 

丘にのぼって いいことしたの

あの人のまわりで 私踊ったりして・・・

独り寝の 夢覚めて思う あのときのこと

「誰にもいわない」 けっして ・・・

(原詩)
 

考槃在澗 

碩人之寬

獨寐寤言 

永矢弗諼
 

考槃在阿

碩人之

獨寐寤歌

永矢弗過
 

考槃在陸

碩人之軸

獨寐寤宿

永矢弗告

(読み下し文)
 

(たのしみ)を考(な)して澗(かん)に在り 

碩人(せきじん)(こ)れ寬(かん)たり

獨り寐(い)ね寤(さ)めて言う

永く矢(ちか)って諼(わす)れず
 

槃を考して阿(あ)に在り 

碩人之れ(か)なり

獨り寐ね寤めて歌う

永く矢って過ぎず
 

槃を考して陸(おか)に在り 

碩人之れ軸(じく)たり

獨り寐ね寤めて宿る

永く矢って告げず



「このあいだ、わたし、あの人といいことしちゃったんだ・・・。
 谷のほとりや山のふもとで。あの人ったら、とってもやさしくってさ。ちょっとしどけないかっこうもしたりして。

だから、二人とも盛り上がっちゃって。楽しかったなぁ。わたし、はしゃいじゃって、あの人の周りを踊りまわったりして。
 だから、毎朝目が覚めてからずっと、あのときのこと思っているんだ・・・。
 でもね。他の人には言わないの。だって、言ったら、あの人とのこと、だめになっちゃうような気がするんだもん。」

 

[使われている言葉について]

  • 考槃、考は、成す。槃は、楽しみ。考槃については、白川静さんが逢引のこと、藤堂明保さんが、遊びまわることだといっているほか、考凡(降神の儀礼)とする説があり、槃には、楽器をたたいて楽しむ、隠居の楽しみ、木を組み立てて家を作ることだなどとする考え方もある。わたしは、逢引説によって若い女のその日の思い出のように解して訳した。

  • 、谷あい。谷川。
  • 碩人、優れた人。立派な徳のある人、大きい人。
  • 、広い。ゆったりした。可愛がる。
  • 、寝る。
  • 、覚める。
  • 、誓う
  • 、いつわる、忘れる、勿忘草
  • 、山の曲がりめ、山あいのすそ。
  • 、ゆるやか。寛大。白川静さんは、いくらかしどけない意味を含ませているのだろうといっている。.
  • 、過ぎたこととして忘れる。
  • 、小高い土地、おか。
  • 、車の軸、丸いものの中心、白川静さんはめぐるというほどの意味だろうという。加納喜光さんは、するりと抜け出た様子だという。
  • 宿、多くの人は目が覚めてもなお臥しているととっているが、第一章、第二章と比べ不自然。加納喜光さんは、思いがとどまって離れないと解している。
  • 、白川静さんは、鞠の仮借で、終わらない、極まりないの意だといっている。多くの方は、「告げない」と文字通りに解している。

 この詩については、賢者が隠遁生活しているのに、それを用いない君主を批判する詩であるとか、隠居生活を楽しむ詩であるとか、男女の逢瀬を題材にしたものだとするものとか、いろいろな説があるようです。
 いろいろ文献を読んでみましたが、かなり断定的に書いては、あるものの、その根拠を明確に記述してくれているものがなく、わたしには、どれが正しいのかは、わかりません。
ただ、原詩を素直に読んだかぎりでは、君主を批判しているようなところは、表には出ていないように思います。
 また、自分が隠遁生活を楽しんでいる様子を詠んだ物とすると、自分で自分を碩人(大きな人、立派な人)っていうだろうか。もし、周りの人がその人を見て言うのなら、「永く誓って・・・」っていうのもおかしい。
 で、結局、ここに載せたような情景、女の子が、恋人とあったときのことを思い出している様子をうたったものというのが、もっとも、ぴったりするように思えたので、そのようなイメージで訳してみました。

(2008/05/26改訂)
「考槃」の印刷用ファイル(a056_print.pdf)をダウンロード


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