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2008年4月 3日 (木)

A-007「兔罝」(肅肅たる兔罝)『詩経』国風 周南

   

  「うさぎ網」
               AKY訳

ぴんと張ったぞ うさぎ網

  とんとととんと杭(くい)うって

力溢れる我輩

      我が殿様のよき家来
 

ぴんと張ったぞ うさぎ網

      選びに選んだうさぎ道

知恵が溢れる我輩

      我が殿様のよき参謀
 

ぴんと張ったぞ うさぎ網

     林の奥まで分け入って

勇気溢れる我輩

      我が殿様のよき相棒

(原詩)
      

肅肅兔罝

椓之丁丁

赳赳武夫

公侯干城
 

肅肅兔罝

施于中逵

赳赳武夫

公侯好仇
 

肅肅兔罝

施于中林

赳赳武夫

公侯腹心

(読み下し文)
      

肅肅(しゅくしゅく)たる兔罝(としゃ)

之を椓(たく)すること丁丁たり

赳赳(きゅうきゅう)たる武夫(もののふ)

公侯の干城(かんじょう)
 

肅肅たる兔罝

中逵(ちゅうき)に施(いた)

赳赳たる武夫は

公侯の好仇(こうきゅう)
 

肅肅たる兔罝

中林(ちゅうりん)に施る

赳赳たる武夫は

公侯の腹心



 「うさぎ網っていうやつぁ、風が吹いたってガサゴソ音がしない様にぴぃーんと張らなきゃだめなんだ。音がしたら うさぎが網に気がついちまう。おいらみたいに力のあるものじゃなきゃできないこった。
 仕掛けるにゃぁ、うさぎの通り道を選はなきゃね。うさぎがこないところに仕掛けたってだめだ。おいらみたいに知恵の回るもんだからできるんだ。
 それも林の奥のほうまで入っていって仕掛けなきゃならない。そうじゃなきゃ うさぎなんかいるもんか。おいらみたいに勇気のあるもんじゃなきゃ、そんなところまで一人でいくこたぁできっこない。
 どうだ、おいらぁ、いい家来だろう? お殿様ぁきっと褒めてくれるぞ。お前は、家来以上だ。参謀だ。いい仲間だってな。」

 うさぎとりの網がうまく張れたというだけで、すっかりいい気持ちになっている、胸を張って大手を振って。まるで勝ち名乗りを受けて、意気揚々と花道を引き上げてくる高見盛みたい。 あるいは、NHKの人形アニメにも出てきそうな、たとえば「ひょっこり ひょうたん島」の海賊船長のような。


 威張っては、いるけれど、どこかかわいい、純真素朴な田舎の青年の様子が目に浮かんでくるようです

[使われている言葉について]

  • 肅肅(しゅくしゅく)、静に音をたてず。
    丁々と音をたてて杭を打っているのだから、音をたてないというのは、網を張るときではなく、張ったあと、風などで、がさごそ音をたてないようにというのだろう。それゆえ、「ぴんと張る」と訳した。
  • 兔罝(としゃ)、罝は、「しょ」とも読む。網のこと。
  • (たく)、打つ、網を張るための杭を打つ。
  • 丁丁、杭を打つ音。擬声語。
  • 赳赳(きゅうきゅう)、強く勇ましい、猛々しい。
  • 干城(かんじょう)、堅く守る。また、その人。武人。干は、盾。
  • (いた)る、施は、旗のなびく様(白川静、字統)。ここでは、網を張り至るの意(白川静、「詩経 国風」東洋文庫)。

  • 中逵(ちゅうき)、逵は、みち。分かれ道。兎網なので、うさぎの通る道のことと解した。
  • 好仇(こうきゅう)、よき仲間。仇は、対等の相手をいい、怨仇ではない(白川静、「詩経 国風」東洋文庫)。
  • 中林(ちゅうりん)、林の中。林中、韻のため倒語としている。
  • 腹心、股肱の臣、もっとも肝要な人物

 この詩にも種々の解釈があります。諸侯やその妻達が優れていれば、世の中に徳が広まるとか、優れた人が集まってくる。あるいは、うさぎ取りを生業にする野人でも立派に役立つという詩だなどとする説もあり、鄭玄や朱子などの注釈でそうなっているのだそうですが、そのような解釈の根拠が示されていないので、私には、なんともわかりません。詩に書かれている言葉だけからイメージして上の詩になりました。

(2008/05/26改訂)
「兔罝」の印刷用ファイル(a007_print.pdf)をダウンロード


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